これから、こちらで、各作品について様々な角度からどんどん紹介していきます!! お楽しみに!!!
まずは、ブラジル映画祭2012の特別招待作品である『茜色の約束 ~サンバ Do 金魚~』の監督・脚本である塩崎祥平さんへのインタビューです。どんなお話がきけるのでしょうか?
『茜色の約束 ~サンバ Do 金魚~』予告編:


Q1 日本で日系ブラジル人を扱う映画を制作しようと思ったきっかけは何でしたか?
──映画の舞台になっているのが、奈良県大和郡山市という所で、そこが僕の出身地なのですが、その町に15年前ぐらい、当時僕は高校生だったのですが、多くの日系ブラジル人の方々が移り住んできました。今では人口は景気の影響を受け、減ったのですが、それが頭の脳裏に残っていて、金魚の映画を作ろうとした時に、昔を思い出し、一人日系ブラジル人の登場人物を入れてみました。するとそのキャラクターが一気に「僕をもっとみてくれと」と言わんばかりに紙の上で主張し、最終的に主役になったのです。
Q2 本映画の大きなモチーフである金魚とサンバに、何か繋がりは感じていますか?
──そんな理由で日系ブラジル人のキャラクターが脚本に入ったので、最初は金魚との関係性や作品のテーマにここまではまり、入り込んでくるとは、正直思っていませんでした。群馬県の大泉町のサンバフェスティバルでサンバを見た時、一瞬でその衣裳の飾りの動き方が金魚のヒレの動きに似ていると思いました。これは映像として分かりやすいと思いました。そこから、どんどんこの不思議な金魚とサンバの絡みがストーリーの中で踊る事になったので、コメディー要素が多い映画の中でも、この二つの要素の繋がりは深い移民のテーマまで掘り下げて映画を観て頂けると思います。

Q3 映画が取りあげている金魚の伝説というのは、実際に存在する伝説なのですか?
──この金魚の伝説は実際には存在しません。僕が脚本の中で書いた伝説の物語でしかありません。しかし、どの町でも、その町にしかないものがあるはずです。それを感じ、観察し、考えてあげると、伝説のストーリーはいくつもできるはずです。それが次第に本当の伝説になっていけばいいし、多くの町で、伝説はすでにいっぱいあると思うのです。伝説とは何かを語り継ぐという事だと思います。大和郡山は金魚産業ですが、特に伝統産業は多く形をなくしていく中で、古いものを信じ、残していく事の大切さをこの伝説の物語を通して何か感じてもらえれば嬉しいです。

Q4 オーディションで、長田たけしさんを抜擢した決め手はどんな点でしたか?
──決定的だったのは、オーディションの中で、他のオーデョション参加者も含め、アドリブの演技をするという難しい状況の中で、周りの空気を笑いの雰囲気に変えた事です。それは、誰にでもできない、その人間が持つ一つの能力とパワーです。

Q5 豪華な俳優陣がキャスティングされていますが、どういった経緯があったのですか? 可能ならば、中村獅童さん、三倉佳奈さん、笹野高史さんの各俳優について教えて下さい。
──中村獅童さんとは以前映画の仕事で一緒になった事がありました。その時は、獅童さんの通訳と英語セリフの確認をするという役目で、現場で色々話をしていたのが今回のきっかけになりました。三倉佳奈さんは僕が一度三倉さんが出演の舞台を偶然観に行った事があり、印象が強かったので、一度脚本を送って読んでもらったら結構即答で出演の返事を頂いたので、びっくりでした。笹野高史さんはこの映画の市長という役で笹野さんのような方がはまるのではと思っていて、脚本を読んで頂き、笹野さんも地域の映画というものに数多く出演される中でその価値と大切さを理解して頂いている事もあって、出演が実現しました。

Q6 サンバ隊が出てきますが、実際のチームなのですか?どのように知り合ったのですか?
──サンバ隊の皆さんは日程とスケジュールの事もあり、最終的にはいくつかのチームの混合で撮影を行いました。群馬大泉町から奈良まで来て頂いた方もいましたし、神戸のチームも大勢で参加して頂きました。スタッフの知人など色んな方々のネットワークで結集されたサンバ隊でした。炎天下の中、遅い時間まで撮影がある中で皆さん真剣に踊ってもらったのが印象に残っていて感謝感謝です。
Q7 映像の美しさも印象的ですが、どのような点にこだわりがありましたか?
──映像の美しさもこだわった場所はありますが、それよりも本当のこだわりは、その町に今あるもの、存在するもの、存在していたもの、忘れられているもので、どこまで普遍的なストーリーを作る事ができるのか、世界中の人が観ても理解できるテーマ性を持った映画を作れるかという事でした。これができると、その町に住む人々も住んでいる町の事をもう一度考えたり、その町を知らない人は、その町の事に興味を抱くと思います。そして、それはどの町で同じ事ができると思うのです。

Q8 映画のシーンで使われているブラジリアン・バーに、こだわりを感じたのですが、特に工夫したところはありましたか?
──獅童さん演じるカルロスの経営するお店は、スタッフの皆さんが日本に存在するブラジルレストランなどを研究して、そして色々なものを揃えてもらいました。工夫というよりかは、このバーの空間は主人公が感じる唯一のよりどころ、安全な場所という雰囲気をだしたかったのです。アットホームな雰囲気を持ちつつ個性を持っているそんなカルロスのキャラクターにあった場所です。

Q9 楽しかった話や、苦労した話など、撮影秘話があれば教えてください。
──映画の製作中は闘いです。楽しかった話は映画を観てもらって観客の表情の変化をみれる瞬間です。苦労するのは、映画の上映をなかなか全国でできない事です。時間がかかるもので、今回のような映画祭は本当にありがたい機会です。
Q10 監督の今後の予定と百米映画社の今後予定、新作情報などありましたら、教えていただける範囲で教えてください。
──次回作もまた関西を舞台にと考えています。東京からだけではなく、地域から何かを表現していく、発信していく。そんな作品作りができればと思っています。今は次回作の開発と、この「茜色の約束」を全国で上映する為に一心に活動するのみです。
Q11 ブラジル映画祭2012で、本作品をみる観客にメッセージをお願いします。
──この作品はファンタジーコメディーというジャンルの映画で決して堅く、暗い映画ではありません。しかし、その中には、地方社会の問題、移民の問題、いじめの問題など、今の社会が考えている課題があります。いじめの問題にしても、大人たちが子供たちに夢や希望、インセンティブを実際にどうして与えてあげるのかが分からないから大きく問題になるのかもしれません。この映画で、少年と少女は金魚の伝説の話を追いかけていく中で、様々な問題を解決していきます。様々な問題とはすべて大人がつくるものです。大きな問題よりも、実は小さいと思われている問題を真剣に考えると、その社会の本質的な根本の問題が分かるはずです。それを理解した上で大きな問題に取りかかった方が良い解決策や色々な考え方が浮かぶはず。映画の少年と少女が本当に欲しかったもの、追求していくものを彼らの目線で観て、ストーリーを追う中で、最後に彼らが得るもの、変えたものが何だったのかを伝説に出てくる皇子と姫とに照らし合わせながら、観て頂けると幸いです。そして、最後には自分の住む町、もしくはふるさとを振り返って欲しいです。
『茜色の約束 ~サンバ Do 金魚~』
特別招待作品(各会場で一度の上映)
東京会場:10月6日(土)13:40〜
大阪会場:10月13日(土)14:10〜
京都会場:10月21日(日)15:45〜
浜松会場:10月27日(土)12:35〜

塩崎祥平監督